ホッケーブーツにようなコントロールのしやすさと高速スケーティングの両立を目指し、さらにフレーム交換も可能なブーツとフレームの機構、それがTrinityマウントです。
Powerslide社では10年くらい前からこの構想はあったものの、素材や技術的な問題でなかなか製品化まで漕ぎ着けられなかったようです。
しかし研究は続けられ、2016年に満を持してようやく、このTrinityマウントを搭載したKaze 80とTau 80というフリースケート用ブーツを発売。翌2017年にはフィットネスブーツやホッケーブーツにもTrinityブーツを展開し、別売りTrinityフレームの種類も増やしていきました。2018年はさらにラインナップを拡充して、Trinityブーツは45モデル、Trinityフレームは40モデルの発売が予定されています。
特徴
このTrinityマウントという規格は、左右非対称となる前2か所と後ろ1箇所、合計3か所のマウントスロットでフレームとブーツを固定しています。
このマウントスロットの位置はホッケーブーツを模しています。ホッケーブーツのフレームには、ブーツに取り付けるための横に張り出した羽が前方と後方にあり、そこにリベットを打ってフレームをブーツに固定しています。これは20年以上前から変わっていない構造で、効率の良い力の伝達とブーツの重心の低さを実現しています。
ブーツ前方のマウントスロットは、ウィールの真上ではなく、フレームの両側に配置させています。これによって、固定ネジのスクリュー部分の長さに当たる約10mm、フレームを低くすることが可能になりました。つまり、Vフレーム規格など、他の一般的なブーツよりも足裏と地面の距離が約10mm低くなっているのです。
Powerslideはこのようなホッケーブーツの利点を取り入れつつ、レンチ1本で簡単にフレーム交換できる Trinityマウント を作り上げました。
ちなみに、全てのTrinityブーツは全てのTrinityフレームを取り付けることができます。
Trinityマウントでは、ブーツ側で横方向に約10mm、フレーム側で縦方向に約10mm、フレームの取り付け位置を調整することができます。
Powerslide社ではこれを Xスロット と呼んでいて、Trinityマウント登場以前から、Powerslideのアーバン系やスピード系のブーツやフレームで採用していました。これにより、あえてフレームを中央より後ろに側に取り付けてかかとに荷重しやすくしたり、内股でインエッジに乗りがちな人はフレームを内側に寄せることで真上に乗りやすくしたりすることもできます。
メリット
まずPowerslideが掲げるTrinityマウントの9つのメリットを見てみましょう。
(Trinitty Three Point Mountingページの「Benefits of Trinity」を意訳して掲載します)
- ジャンプやギャップ超えに優れている
- スピードと加速がもっと速くなる
- より繊細でより楽なブーツ操作ができる
- 驚異的な力の伝達とプッシュ
- 振動を抑えやすい
- バランスが取りやすく、制御しやすい
- スライドで操作しやすく、力を掛けやすい
- 可能な限り低くなった重心
- エッジコントロールがしやすい
この中でまず重要なのが、「8. 可能な限り低くなった重心」です。
特徴の項目で述べたように、フレームが約10mm低くなることによって、ブーツの重心も約10mmが低くなります。そのおかげで滑りの安定感が上がります。たかが10mmですが、スケートブーツにおいては、ミリ単位の調整で操作感が変わってくることが多々あるので、この10mmの差はかなり大きいものとなります。
例えば4x80のTrinityフレームは、4x72のVフレームで滑るよりも低い重心で滑ることができます。
あるいは、4x80のVフレームに80mmウィールを入れて滑る場合と、3x90のTrinityフレームに90mmウィールを入れて滑る場合では、高さがほぼ同じになります。高さ(ブーツの重心)が変わらないので安定感の差はあまり感じられませんが、ウィールの直径が10mm大きくなる分、加速が速くなり速度を維持しやすくなります。
そして、その他の8つのメリットを実現させているの主な要因が羽 、つまりフレーム前部の両側に飛び出ている2箇所のマウント部分です。
この羽のおかげで、足の指の付け根部分からの、フレームやウィールへの力の伝達がよりダイレクトになりますし、インエッジやアウトエッジのコントロールの精度も上がります。
さらには足の指の付け根部分で踏ん張りが効きやすくなるので、悪路での振動などによるブーツのブレを抑えやすくなったり、ジャンプの着地などでブーツがぐらつきにくくなります。
デメリット
Trinityマウント規格のブーツは少し特殊な構造なので、一般的なブーツよりソールの強度が必要となります。そこでグラスファイバー強化樹脂やカーボン素材でソールやシェルが作られています。
そのため、ブーツの価格が他の同等ランクのものより少し高い傾向にあります。
TrinityフレームはVフレームなどの他のフレーム規格と互換性がありません。2018年2月現在、両フレームの互換アダプターも販売されてません。そのため、他規格のフレームを多く持っている人は、その資産が活かせません。
TrinityマウントはPowerslide社が特許を取得しています。そのため、他社がTrinity規格の様々なブーツやフレームを製造、販売することができません。
また、他社製品との市場競争による値下げなども期待できません。
総評
Vフレーム規格が普及してから約10年後に登場したこのTrinityマウントは、インラインスケートをより楽しく、より高度な技にチャレンジしやすくするために新たな技術が投入された規格となっています。
とは言え、Trinityマウントのブーツやフレームは決して安くはありません。Vフレームを何セットも持っている人ほど、Trinityに移行しにくいと思います。しかしインラインスケート歴が長い人ほど、Trinityのブーツを履いて滑った瞬間にそのメリットを実感できるばすです。アグレッシブを除くどのジャンルでもその恩恵を受けることができるでしょう。
参考ページ
サイト | ページ | 説明 |
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Trinity Three Point Mounting | https://www.powerslide.com/trinity/ | Powerslide公式ページ |
Technology | http://www.reign-hockey.com/technology/ | Reign Hockey公式ページ |